産業医候補の選定— 探し方・資格要件・契約条件
本記事は、選任義務を確認したあとの「選任決定」のステップを扱います。産業医候補をどう探すか、資格要件は何か、専属と非専属の違い、契約条件、そして事由発生から14日以内に決める選任日まで、人事担当者が判断すべき項目を整理します。
この記事で分かること
- ✓資格要件は労働安全衛生規則第14条第2項で5パターン。多くは日本医師会認定産業医
- ✓1,000人以上または有害業務500人以上は専属産業医が必要
- ✓選任は事由発生日から14日以内。「50人到達日」と「選任日」を混同しない
このステップの位置づけ
本記事は、第1回の全体図のうち、ステップ2「選任決定」を扱います。選任義務があることを確認したあと、どんな医師を、いつまでに、どんな条件で選任するかを決める段階です。
シリーズ全体の流れとよくある質問は「産業医選任 完全ガイド」にまとめています。
1. 産業医候補をどう探すか
産業医候補を探す方法はいくつかあります。多くの中小企業は、地域の医師会、産業医紹介サービス、人事ネットワーク経由で候補者を見つけています。
産業医候補の主な探し方
- ・都道府県・市区町村の医師会(日本医師会認定産業医を紹介)
- ・産業医紹介サービス・コンサルティング会社
- ・取引先・人事ネットワーク経由の紹介
- ・地域産業保健センター(小規模事業場向け、ただし選任とは別の仕組み)
2. 産業医の資格要件を確認する
産業医になれる医師は、医師免許に加え、労働安全衛生規則第14条第2項に定められた次のいずれかの要件を満たす必要があります。契約予定の医師が、どの要件に該当するかを最初に確認してください。
産業医の資格要件(労働安全衛生規則第14条第2項)
- 1厚生労働大臣が指定する者が行う産業医研修を修了した医師(日本医師会認定産業医など)
- 2産業医の養成課程を設置している大学において、当該課程を修了し、その大学が行う実習を履修した医師
- 3労働衛生コンサルタント試験区分「保健衛生」に合格した医師
- 4大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、講師(いずれも常勤)の経験ある医師
- 5厚生労働大臣が定める者(産業医科大学卒業生で所定の研修を修了した者など)
初めて契約する場合、多くは「日本医師会認定産業医」として研修を修了している医師です。その場合は、研修修了証書の写しが届出時の添付書類になります。
3. 専属と非専属、専任と兼任の違い
産業医には「専属」と「非専属」、「専任」と「兼任」の区分があります。事業場の規模・業種により、専属産業医が必要な場合があります。
専属産業医が必要な事業場
専属産業医が必要なケース(労働安全衛生規則第13条第1項第3号)
- ・常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
- ・常時500人以上の労働者を使用する事業場で、有害業務(深夜業を含む)に常時500人以上が従事する事業場
上記に該当しない場合は、非専属(嘱託)の産業医で問題ありません。月1〜2回程度の訪問契約が一般的です。
4. 契約条件を整理する
契約条件は、産業医候補との相談で決めますが、最低限以下を整理しておきます。
契約条件で整理する項目
- ・訪問頻度(月1回、月2回、四半期1回など)
- ・訪問日の業務範囲(職場巡視、面談、衛生委員会出席、健診結果レビューなど)
- ・面接指導の対応(長時間労働、ストレスチェック後高ストレス者、健診事後)
- ・緊急時の連絡方法(メール、電話、オンライン面談)
- ・記録の保管方法、職場の機密保持
- ・契約期間と更新条件、報酬
5. 選任日を決める
選任すべき事由が発生した日(事業場が50人に到達した日など)から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告する必要があります(労働安全衛生規則第13条)。
「50人到達日」と「選任日」を混同しない
「事業場が50人に達した日」と「契約・選任日」は別物です。社内で日付を明確に記録してください。たとえば、4月1日に50人到達した場合、4月14日までに産業医を選任し、選任後すみやかに届出を行います。
次回(ステップ3)
次回は、ステップ3「届出準備」を扱います。様式第3号の記入欄を番号付きで丁寧に解説し、添付書類、入力支援サービスの利用方法を整理します。
本記事のご利用上の注意
本記事は、厚生労働省・労働局等の公表情報をもとに、人事・総務担当者向けに実務上の確認ポイントを整理したものです。実際の届出要否、記載方法、対象労働者の範囲は、事業場の所在地、規模、業種、作業内容等により異なる場合があります。実務対応にあたっては、最新資料と所轄労働基準監督署の案内をご確認ください。
参照元
- e-Gov 法令検索「労働安全衛生規則」 — 第13条(産業医の選任)、第14条第2項(産業医の資格要件)
- 日本医師会「産業保健」 — 日本医師会認定産業医の制度
- 東京労働局「総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医のあらまし」