休職開始時の会社の対応と、休職中の連絡ルール

手引きの全体像この手引きは、5つのステップでできている

厚生労働省のガイドライン「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下、手引き)は、心の健康問題で休業した社員の職場復帰支援を、会社が組織的・計画的に行うための事業場向けマニュアルです。休業の開始から復帰後のフォローアップまでを、次の5つのステップで示しています。

手引きの5つのステップ

職場復帰支援の流れ(図2)
本記事 枠で囲んだステップ  出典:手引き「図2 職場復帰支援の流れ」

本記事が扱うのは、この流れの入口——第1〜2ステップ(病気休業の開始・休業中のケア・主治医による復職可能の判断)です。休職が始まる前後で、会社が何を決め、本人に何を伝え、どう連絡するかを整理します。

社員から病気休業の診断書が提出されます。ここから、手引きの第1ステップ「病気休業開始及び休業中のケア」が始まります。休職対応のもめごとの多く——休職期間の期限(満了日)をめぐる紛争、音信不通、復職判定での対立——は、休職の終盤ではなく、この入口の設計に原因があります。第1〜2ステップは分量こそ少ないものの、後のすべてのステップの土台になります。

この記事で分かること

  • 休職に入る直前、会社が整理しておくこと——自社規程のどこを確認し、本人に何を渡すか——が手順でわかる
  • 休職をめぐる紛争の多くは、休職期間の期限(満了日)の説明が先送りされることから生まれる——それを防ぐ最初の説明と連絡計画の作り方がわかる
  • 休職中の社員への連絡を、上司と人事のどちらが・いつ・何のためにするかを決められる

第1ステップ|病気休業の開始休職の条件は、就業規則で決まる

前提として、私傷病による休職は、法律で定められた制度ではありません。期間も条件も満了後の扱いも、すべて各社の就業規則が決めています(定めを置く場合は記載義務のある事項——労働基準法第89条)。手引きは各ステップの中身を「ア・イ・ウ…」という項目で整理しています。その第1ステップの一項目(エ)では、次の3点を労使の十分な協議によって決定し、あらかじめ就業規則等に定めて周知しておくことを求めています。

  • 休職期間の最長(保障)期間——何か月休めるのか。勤続年数で差をつけるのか
  • クーリング期間——復職後に同一理由で再び休むとき、前回の休業期間を通算するのか
  • 満了時の扱い——自然退職か、解雇手続きか。本人の雇用に直結する規定です

なお、休職中の生活を支える傷病手当金(健康保険法第99条)は会社の制度ではなく健康保険の給付なので、就業規則に書かれていなくても使えます。

この3点は手引きが挙げる最低限で、実際の就業規則では、あわせて「休職に入る基準」と「復職の基準」を定めるのが一般的です(厚生労働省「モデル就業規則」の休職規定も、同じ構成をとっています)。

  • 休職に入る基準(発令の要件)——私傷病による欠勤が何日続いたら休職を命じるのか。診断書の提出をいつ・誰に求めるのか
  • 復職の基準(休職事由の消滅)——多くの規程は「休職事由が消滅したとき」と定めていますが、それを何で判断するか(主治医の診断書・産業医等の意見・会社の決定手続き)まで書かれているかが分かれ目になります。主治医の診断書だけで自動的に復職が決まる建て付けにしないことが、後の対立を防ぎます(第2ステップで後述)

下の規程例は、休業の開始から復職後の措置までを一続きの手続きとして定めた例です。全文を読み込む必要はありません——自社規程と見比べるとき、「入る基準」「期間」「復職の基準と手続き」「満了時の扱い」の4か所を照合する型として使えます。

規程例(前半):休業の開始〜休業中
規程例(前半):休業の開始〜休業中 私傷病による職員の休業及び復職に関する規程例。手引きのリーフレット版に載っています。
出典:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成24年7月改訂・リーフレット版)
規程例(後半):復職の手続き〜復職後の措置
規程例(後半):復職の手続き〜復職後の措置 通勤訓練・試し出勤・復職後の措置までを含む。
出典:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成24年7月改訂・リーフレット版)

第1ステップ|休業開始時の説明最初の説明が、すべての土台になる

就業規則の周知は労働基準法第106条が定める義務で、イントラネットに規程集を置いていれば、形式は満たしています。ただ、不調で眠れないなかで診断書を受け取り、これから休みに入ろうとしている人が、規程集を開いて自分の満了日を計算するのは、現実には難しいことです。

そのため本人は、満了日や復職の手続き、傷病手当金の存在を知らないまま休みに入ることが少なくありません。数か月後、期限が近づいてからの通知で初めて休職に期限があったことを知ると、本人には唐突な知らせとして受け止められ、会社との行き違いが生まれやすくなります。休みに入る前のひと言の説明が、この行き違いを防ぎます。

トラブルの多くは、規則がなかったことよりも、規則が伝わっていなかったことから生まれています。

手引きは休業開始時に「休業中の事務手続きや職場復帰支援の手順についての説明」を行うこと、経済的・将来的な不安の軽減のため傷病手当金その他の公的支援制度についてパンフレットを渡すなどの情報提供を求めています。説明は単なる親切ではなく、手引きが求める支援の一部です。満了日を単体で伝えると突き放した通知のように受け取られかねませんが、復職までの流れ・使える制度・相談先とセットで渡せば、本人にとっての地図になります。

休職に入るとき、本人に何を伝えるか。手引きが説明・情報提供を求める項目は、次の4つに整理できます。

  • 休業中の事務手続き——診断書の提出先とタイミング、傷病手当金の申請のしかた
  • 職場復帰支援の手順——休業の開始から復職後のフォローアップまでの5つのステップ
  • 経済的な支えの情報——傷病手当金(給与のおよそ3分の2・支給開始から通算1年6か月)など公的支援制度
  • 相談できる場——社内の窓口、社外の相談機関・地域資源(精神保健福祉センター等)

これに加えて、休職期間の期限(満了日)連絡窓口(担当者の名前と連絡方法)も、あわせて書き添えます。期限を最初に共有しておくと、終盤になって初めて知らされたという行き違いを防げます。

第1ステップ|休業中のケア休業中の連絡は、設計の問題である

手引きは休業者への接触を「望ましい結果をもたらすこともある」と積極側に置き、設計のポイントを示しています。内容は安心感の醸成——本人が抱える精神的な孤独・復職への不安・キャリアへの不安に十分な情報を提供し、相談できる場(社外の相談機関・精神保健福祉センター等の地域資源を含む)を確保します。経済面では、傷病手当金が給与のおよそ3分の2・支給開始日から通算1年6か月支給されること(2022年改正で通算方式)、休職中も社会保険料の本人負担分と住民税は発生することを、最初に伝えます。

タイミングは事務に乗せる——診断書や傷病手当金申請書の提出に合わせると本人の負担が軽い、と手引きは具体的に書いています。実際の接触は、必要な連絡事項などを除き、主治医と連絡をとった上で実施する。休み始めの急性期は、連絡自体が負荷になるためです。どの局面かを会社が独自に判定せず、本人の同意のもとで主治医に確認します。

計画は満了日から逆算する——3か月前に復職意向の確認、2か月前に復職準備の開始判断、1か月前に満了手続きの最終確認。日付と担当者名を入れ、窓口を一本化し、記録を一行残します。連絡で何を聞いてよいか——健康情報の扱い——は、第4回で詳しく扱います。

第2ステップ|主治医による復職可能の判断主治医の「復職可」と、産業医等の精査

本人から復職の意思が伝えられたら、復職可能の判断が記された主治医の診断書(復職診断書)を提出してもらいます。手引きは、ここで注意を明記しています。主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって復職の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らない。診断書には、本人や家族の希望が含まれている場合もあります。そのため、診断書を受けて、産業医等がその内容を精査します。

このとき、主治医と産業医の意見が違うことがあります。どちらかが間違っているわけではありません。二人は、同じ回復を別の場所から見ています。

主治医が診ていること

日常生活を送れるまで、回復したか

  • 眠れる
  • 食べられる
  • 外出できる

働くことの土台になる日常生活。診察室で確認できるのは、ここまで

この「見ている場所の違い」を、復職に求められる回復のレベルとして並べたのが次の図です。主治医の「復職可」が出た時点では、職場で業務ができる水準との間に、まだ差が残っていることがあります。

2つの「復職可能」とその差
この差の確認が必要になる
業務に耐えられ、症状が悪化しない水準 主治医の「復職可」の目安
日常生活が送れる
職場で業務ができる

出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の記載をもとにWELDが作図
© 2026 WELD Consulting Group

手引きは、このずれを小さくする方法も示しています。会社からあらかじめ主治医に、業務内容や勤務制度など職場の情報を提供したうえで、「就業が可能」という回復レベルで意見書を書くよう依頼しておくことが望ましい、とされています(6(1))。

では、この距離を誰が・どうやって測るのか。会社側(産業医等と人事)が、本人・主治医・職場のそれぞれから情報を集めて、復職できるかを判断します。その手順を定めているのが第3ステップです。手引きの中で最も分量が多い部分なので、次回くわしく解説します。

第1〜2ステップ共通現場で実際に詰まるところ

  1. 1説明がないまま休職が始まる。満了時トラブルの大半は、ここに起因します。説明書面と、渡した日付の記録を残します。
  2. 2「そっとしておく」が数か月続く。原因の多くは、担当の不在にあります。誰かが冷たいわけではなく、日常業務のなかでこの連絡を担う役割と余力が、誰にも割り当てられていないためです。連絡計画に日付と担当者名がなければ、連絡は発生しません。
  3. 3期間の管理が漏れる。満了日・クーリング期間・傷病手当金の支給期間。確認日を先にカレンダーに入れます。
  4. 4復職診断書が出た翌週に、復帰日を設定してしまう。手引きは、復職前の面談等に十分な準備期間を求めています。復職診断書は復職日の決定ではなく、復職準備の開始合図です。

4つに共通するのは、その場の判断の失敗ではなく、あらかじめ決めていなかったことが原因だという点です。手引きが、休業の入口の段階で手順を決めておくことを求めているのは、このためです。

休職に入る前後で、整理すること

まとめ

入口をきちんと設計しておくことが、休職の終盤でもめないための、いちばんの準備になる。

次回は、手引きが最も分量を割いている中心部——復職可否の判断と支援プランの作成(第3ステップ)——に進む。

参照元一覧

  • 厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月策定、平成24年7月改訂)第1〜2ステップ、6(1)、規程例 https://kokoro.mhlw.go.jp/guideline/files/syokubahukki_h24kaitei.pdf
  • 労働基準法第89条(就業規則の記載事項)、第106条(周知義務)
  • 健康保険法第99条(傷病手当金。令和4年1月施行の改正により支給開始日から通算1年6か月)
  • 厚生労働省「モデル就業規則」(休職規定の規定例)
  • ※私傷病休職制度の法的性格は、労働法実務・判例上の一般的な理解に基づいています。個別の規程の設計・変更は、社会保険労務士・弁護士等にご相談ください。

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本シリーズについて|いま読んでいる場所

本シリーズは、厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年策定・平成24年改訂)の解説シリーズです。手引きは、心の健康問題で休業した労働者の職場復帰支援を、会社が組織的・計画的に行うための事業場向けマニュアルで、会社はこれを参考に、衛生委員会等での調査審議を経て自社の「職場復帰支援プログラム」を策定することが求められています。本シリーズでは、手引きの5つのステップとプライバシー保護の章を、実務の詰まりどころとあわせて全4回で扱います。

こんな方へ:人事・労務の担当者(制度はあるが運用手順が決まっていない)/管理職(休職中の社員への連絡や配慮に迷う)/休職中・休職を考えている社員(自分の休職と復職がどんな流れで扱われるのか知りたい)

  1. 第1回休職開始時の会社の対応と、休職中の連絡ルール本記事第1〜2ステップ
  2. 第2回復職可否の判断基準と、職場復帰支援プランの作り方第3ステップ
  3. 第3回復職の決定手続きと、復職後のフォローアップ第4〜5ステップ
  4. 第4回休職者の診断名の共有範囲と、健康情報の取扱いルールプライバシーの保護

共通資料:復職までの道のりマップ(本人と会社の2つの視点で全体像を1枚にした図)

WELD 編集部

休職・復職の実務 第1回(全4回)