指針は、何から手をつけろと言っているのか。

高年齢者の労働災害防止のための指針は、事業者が講ずべき措置を5つに分けています。ただ、5つを同時に始めるようには書かれていません。起点はリスクアセスメントで、そこから優先順位をつけて降りていく構造になっています。通達に添えられた1枚の図が、その全体を示しています。

この記事で分かること

  • ✓指針が求める体制と取組の全体像(通達の図をそのまま掲載)
  • ✓体制ができているかを確かめる点検表
  • ✓対策を検討する順序。設備が先で、作業管理が後という理由

全体像は、1枚の図にまとまっています

事業場における安全衛生管理の基本的体制及び具体的取組の体系図。体制は経営トップの方針表明から労働者の意見を聴く機会と組織・担当者の指定へ、そこから危険源の特定等のリスクアセスメント及び対策の検討へつながる。具体的取組は場のリスクと人のリスクを縦軸に、予防・把握・気づき・措置を横軸にした表で示されている。
出典:厚生労働省「「高年齢者の労働災害防止のための指針」について」(令和8年2月10日付け基発0210第1号)別紙「事業場における安全衛生管理の基本的体制及び具体的取組」

上半分が体制です。経営トップの方針表明から始まり、労働者の意見を聴く機会と、担当する組織の指定へ広がります。その3つがリスクアセスメントに集まる形になっています。

下半分が具体的な取組です。縦に「場のリスク」と「人のリスク」、横に「予防」「把握・気づき」「措置」を置いた表になっています。安全衛生教育は縦に貫いています。

この表の読み方は、産業保健の実務と対応しています。健康診断は「把握・気づき」の欄にあり、その右の「措置」の欄に、健診後の就業上の措置、面接指導、保健指導が並びます。左の「予防」の欄には、運動習慣や生活習慣の見直しがあります。

体制ができているかを確かめる

点検表1

  • □高年齢者の労働災害防止に取り組む方針を、経営トップの名前で示している
  • □担当する組織か担当者を決めている(安全衛生部門、または人事労務部門)
  • □安全衛生委員会で調査審議している。委員会がない場合は、労働者の意見を聴く機会を設けている
  • □災害事例やヒヤリハット事例から危険源を洗い出し、優先順位を検討している
  • □産業医がいない事業場では、地域産業保健センター等の外部機関を使うことを検討している

委員会がない事業場について、通達は次のように書いています。会議体の形をとる必要はなく、職場で行っている定例の会議や業務ミーティングも使えるとされています。

リスクアセスメントについては、危険性又は有害性等の調査等に関する指針に沿った手法で取り組むよう努めるものとされています。災害事例やヒヤリハット事例は、職場のあんぜんサイトの事例集を参考にできます。

通達には、留意点も並んでいます。第三次産業のうち飲食店や社会福祉施設等では、家庭生活と同種の作業を行うため危険を認識しにくいこと。社会福祉施設等で利用者の事故防止のためにヒヤリハットを集めている場合、その仕組みを労働災害の防止にも使えること。

対策は、この順序で検討します

指針はリスク低減措置の順序を示しています。危険性又は有害性等の調査等に関する指針に沿った順です。

点検表2

  • 1危険な作業の廃止・変更。設計や計画の段階で、危険性や有害性そのものを取り除くか減らす
  • 2工学的対策。手すりの設置、段差の解消、防滑素材の採用、リフトやアシストスーツの導入
  • 3管理的対策。マニュアルの整備、作業スピードの見直し、複数作業の同時進行を避ける
  • 4個人用の装備。身体の負荷を軽くする個人用装備の使用

リーフレットは、この順序を「設備・装置の導入を検討した後に、作業管理についても検討する」と表現しています。人の動き方を変える前に、まず物のほうを変えられないかを見る、という順序です。

前の記事で挙げた調査では、作業管理は56.5%が実施している一方、設備・装置の導入は25.2%でした。優先度の高いほうが、実施率は低くなっています。

指針は、年間の推進計画を作り、一定の期間で評価して改善することが望ましいとしています。取組の全体を一度に整えるのではなく、リスクアセスメントで出た優先順位の高いものから決めていく形です。

なお通達は、請負の形式による契約で業務を行う者についても、この指針を参考にして取り組むとしています。雇用している労働者だけが対象ではありません。

5つの柱のうち「健康や体力の状況の把握」については、次の記事で扱います。

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