第一種か第二種か、何人必要か — 衛生管理者の選び方

選任義務の対象だと分かったら、次は「誰を選ぶか」だ。ここで決めることは三つある。どの資格(第一種か第二種か)の人が必要か、何人選任するか、そして専属・専任といった上乗せ要件に当てはまるか。いずれも自社の業種と人数で決まる。順に見ていけば、必要な人材像がはっきりする。受験する方にとっては、ここが「関係法令」科目の山場でもある。

この記事で分かること

  • 第一種は全業種、第二種は有害業務の少ない業種に限られる。違いは「有害業務を扱えるか」
  • 選任人数は規模で段階的に増える。50〜200人で1人、3,000人超で6人
  • 専属が原則。1,000人超などで専任、一定の有害業務で衛生工学衛生管理者が必要になる

このステップの位置づけ

第1回で、自社が選任義務の対象(常時50人以上)であることを確認した。本ステップでは、その事業場に置くべき衛生管理者の「種類」と「数」、そして特別な要件を確定する。ここが決まれば、第3回の報告書には実際に誰を選任したかを書くだけになる。

「衛生管理者 選任ガイド」全4回の現在地です。

第一種と第二種、どちらの資格者が必要か

衛生管理者の免許には第一種と第二種があり、違いは難易度の上下ではなく、対応できる業種の範囲だ。判断の起点は、自社の業種である。

第一種衛生管理者

すべての業種で選任できる

製造業・建設業・運送業・医療業・清掃業など、有害業務を含む業種でも選任できる。これらの業種では第二種では足りず、第一種が必要になる。

第二種衛生管理者

有害業務の少ない業種に限られる

情報通信業・金融保険業・卸売小売業など、有害業務との関連が少ない業種でのみ選任できる。オフィス中心の事業場の多くはこちらで足りる。

迷ったときの目安として、危険・有害業務を多く含み安全管理者の選任義務がある業種(製造・建設・運送など)は、衛生管理者も第一種が必要になる場面が多い。将来の業態変更や事業拡大の可能性があるなら、最初から第一種の資格者を確保しておくと取り直しの手間がない。

何人選任するか

選任する人数は、その事業場で常時使用する労働者数に応じて段階的に決まる(労働安全衛生規則第7条)。

常時使用する労働者数選任する衛生管理者
50人以上 200人以下1人以上
200人超 500人以下2人以上
500人超 1,000人以下3人以上
1,000人超 2,000人以下4人以上
2,000人超 3,000人以下5人以上
3,000人超6人以上

人が増えるほど必要な衛生管理者の数も増える、という素直な構造だ。ここでも数えるのは事業場単位であることに注意したい。

専属と専任、衛生工学衛生管理者

人数に加えて、規模や業務内容によって三つの上乗せ要件がある。言葉が似ていて紛らわしいので、分けて整理する。

専属は「その事業場だけに所属していること」。衛生管理者は原則として専属でなければならない。ただし例外があり、2人以上を選任し、その中に労働衛生コンサルタントがいる場合は、そのうち1人は専属でなくてもよい。

専任は「他の仕事と兼ねず、衛生管理に専念すること」。常時1,000人を超える事業場、または常時500人を超え一定の有害業務に常時30人以上が従事する事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任とする。

衛生工学衛生管理者は、有害業務の管理に特化した免許。常時500人を超え、一定の有害業務(坑内労働や著しく暑熱・有害なガス・粉じん等の業務)に常時30人以上が従事する事業場では、衛生管理者のうち1人を、この衛生工学衛生管理者免許を受けた者から選ばなければならない。

専属は「どこに所属するか」、専任は「何に専念するか」。別の軸の話だと分けて覚える。

資格者をどう確保するか

必要な種類と数が分かっても、肝心の資格者が社内にいなければ選任できない。確保の道は大きく二つだ。ひとつは社内で受験を促すこと。総務・人事・現場の管理職などが第一種・第二種を取得すれば、自社の実情を知る衛生管理者が育つ。もうひとつは有資格者を採用することだが、即戦力は採用競争になりやすい。

中長期では、社内受験の促進が現実的で、コストも低い。受験勉強そのものが、選任義務・巡視・衛生委員会といった実務の予習になる。今まさに受験している担当者は、将来の自社の衛生管理者そのものだと捉えると、勉強の意味づけも変わってくる。

試験ではこう問われる

  • 第一種・第二種の業種範囲
  • 規模ごとの選任人数
  • 専属の原則と例外(労働衛生コンサルタント在籍時)
  • 専任の境界(常時1,000人超、または常時500人超かつ有害業務に常時30人以上)
  • 衛生工学衛生管理者の要件
  • ポイント:「500人超かつ有害業務30人以上」の二重条件と、専属・専任・衛生工学の区別

次回(ステップ3)

第3回は「選任報告書(様式第3号)の書き方」。産業医とも共通の用紙に、何を、どの欄に書くか。記入欄を順に確認し、添付書類と入力支援サービスの使い方まで押さえる。

本記事のご利用にあたって

本記事は、労働安全衛生法および厚生労働省・労働局等の公表情報をもとに、実務担当者向けに要点を整理した一般的な解説です。選任義務の有無・人数・記載方法・対象範囲は、事業場の規模・業種・作業内容等により異なります。実際の手続にあたっては、最新の法令と所轄の労働基準監督署・産業保健の専門家にご確認ください。最終的な要否・正誤の確認は、ご自身(各自)で行ってください。

参照元

  • 労働安全衛生規則 第7条(衛生管理者の選任・人数・専属・専任)・第10条(衛生管理者の資格)/e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/
  • 公益財団法人 安全衛生技術試験協会「第一種・第二種衛生管理者の紹介」:https://www.exam.or.jp/
  • 厚生労働省・各都道府県労働局「安全衛生管理体制のあらまし」
  • 本記事は2026年6月時点の法令に基づく。選任の前に、最新の取扱いを所轄の労働基準監督署で確認されたい。